2010/04/15

第六感

第六感という言葉がある。視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚の他もうひとつの人間の感覚だ。
それは、普段感じることができない現象を捉えられる感覚で、幽霊を見ることができる事や、パワースポットに惹かれるような事も同じ事だろうと思う。
それが、あるという人もいるし、錯覚だいという人もいる。しかし自分を観察して耳を済ませると、感じられるものがあると思う。旅をしていると、一人でいる時間が多く自然の前や、遺跡の前ではそのような状況になることが多い。自分がそれを感じることができた場面を書こうと思う。


グアテマラ ティカル遺跡

グアテマラと、メキシコの国境の近くに、ティカル遺跡というものがある。マヤ文明の最大の遺跡群で、数多くのピラミッドが鬱蒼とした熱帯雨林の中に点在している。ピラミッドというと、エジプトのものや、メキシコシティーのティオティワンカピラミッドが有名だ。どれも砂漠の中に立つものなので、ピラミッド=砂漠と考えるかもしれないが、ティカル遺跡は、大自然に囲まれた苔むしたピラミッドだ。いろいろ遺跡を見てきたが、砂漠にある遺跡とは違い、これだけそこに根付く生命力があふれている遺跡をあまり見たことはない。大自然の力がよりいっそう、遺跡の力強さを表現しているような感じがするだ。補修されてきれいに整えられたピラミッドも魅力的だが森に埋まってしまった人工物と自然物が調和した景観は本当に美しかった。

自分がその遺跡についたのは明け方だった。熱帯雨林なので鳥たちの声が森を包んでいる。
遺跡の中には、一応遊歩道が張り巡らしてあり。(といっても獣道)、地図どおり歩くと、すべて回れることになっている。自分は、コース通りいくのもつまらないので、少し違うルートにいって見ようと、脇道にそれてみた。その道はメインの遺跡から少しはなれ、ちょうど巨大ピラミッドの裏にいく道だった。
普通なら、それで話が終わるのだが、この遺跡にはほかの遺跡にはないものが一つあった。

それは、ピラミッドの中央につながる土のトンネルがあったのだ。正確にいうと、ピラミッドの淵の部分から少し沈み込む様にしてピラミッドの内部に続いているトンネルで、四つんばいになってやっと入れるぐらいの穴だった。いったい、何の為に掘られた穴なのかはわからないが、看板なども建ってないことから、観光用だとも考えられないのである。

日本にいれば、そんな穴には絶対入らない。しかし、そこはグアテマラの奥地だ。
気軽に来ることができる場所ではない。もう一生ピラミッドの中に入るチャンスはないという思いが自分をその穴に入らせた。

一時間という時間を決めて、中に入ってみた。

穴はどこまでも暗く続いている、外の気温よりも少し蒸し暑い。
だんだん、入り口からの光が届かなくなり、あたりは真っ暗になる。
頭の上をこうもりーが掠めて飛んでいく。
手探りで穴の中を進むと、そこに一段だけのぼれるスペースがあった。
そこに何とか体を運んでみる。距離的にちょうどピラミッドの中央部分あたり
そこで一段あがって、トンネルは行き止まりになっていた。
トンネルが行き止まりになって、前に進むという事から開放された時、自分はそこで何を感じたのか?勘違いと思われても仕方ないと思うのだが

それは重力だった。

とんでもないくらいのプレッシャーがピラミットから流れてくるのを感じたのだ。それと同時に地面に引っ張られる感覚がしたのだ。狭くて暗い場所なら、いままで何回も入ったことがある。しかし、今回感じたような重圧は初めてだった。

その後、自分はその場で一時間ほどいたらしい。近くを通った西洋人のカップルの声がして我に返り
外に這い出たのだった。

今思い返してみても、あの穴はなんだったのかなぞである。そしてあの穴で出会った出来事もなぞである。しかし、この体で感じた、鮮烈な感覚はいまでも体の中に残っている。